農業研究所⑪
稲品種改良の不思議
1日10サンプルを食べ比べる
品種改良で最も重要なことはお米の味を良くすることです。機械による選抜方法もありますが、食べ比べることが最も確実です。
品種ごと、試験区ごとに300gの精米を10サンプルずつ炊飯し、基準品種と比較して、光沢、固さ、粘り、うまみ、においのほか、全体的な味としての総合評価を調べます。毎年10月から翌年の3月ごろまで、毎日食味試験が続きます。食味の実力を見極めることが、最も難しい特性検定といえます。
数々の厳しい検査の中で、富山県農業を支える能力を持たないと判断された稲は、容赦なく廃棄されます。
品種候補、大海に乗り出す 現地実証試験
厳しい選抜を潜り抜けて、ようやく有望な品種候補が絞られます。研究所内の環境とは違い、一般栽培ではほ場も大きく、水の当たり具合や土の加減も異なります。また、田植機やコンバインなど大型機械での作業に耐えられるかどうかも問われます。富山県では、中核農家や集落営農など栽培規模の大きな経営体が増えてきており、田植えや収穫作業が何日も続きます。このような生産条件の中でも安定して高い品質と収穫量を保てるものだけが、品種として認められます。