農業研究所⑥
稲品種改良の不思議
稲の選抜
固定の進んだ数千、数万の稲の中から、両親から受け継いだ良い遺伝子が組み合わさった稲だけを選びます。稲の生育初期は草丈や枝の量、葉色の濃淡などを観察。穂が出始めてからが、選抜の本番です。出穂時期、茎の長さ、穂数、粒の数、粒の大きさ、成熟度合、病気の具合などを丁寧に何度も調べ、有望な株にはマークを付けていきます。最初は有望そうに見えても、成長していくにつれて粒が小さかったり、不揃いであったり、かなりの数の株が脱落。穂の実りの状態を見るだけでなく、株元をつかみ株の張り具合や1本1本の茎の充実度、風や雨で稲が倒れたときの強度などを確認します。選抜時の最後の決めては、穂を手に取ったときの感覚です。ずっしりと重い、みずみずしい株を選びます。
移植時期、肥料の量を変える知恵
有望と思われる稲を選抜した後は、その稲からどれくらいの米が収穫できるか、雨や風で株が倒れた後でもまた立ち直ることができるのか、病気や暑さに対する抵抗力、穂発芽のしやすさ、品質の良否、そして食味などの特性について徹底的に調べます。
まず、その稲からどれくらいの米が収穫できるか(収量性)を調べるために、有望株ととともに基準品種や比較品種を植えます。そうすれば、生育の特徴や出穂期、成熟期などが容易に確認できます。移植時期は4月下旬、5月上旬、中旬、下旬など3から4回に分け、気象条件等を変えて1年間で3~4年分のデータを集めます。
肥料の量(施肥量)を変えた試験では、雨や風で稲が倒れたとき(倒状)の強さが分かるだけでなく、品種に応じた肥料の適正量の目安が分かります。