農業研究所⑤

稲品種改良の不思議

1年に3回、稲を育てる

稲の遺伝子は32,000個あるといわれています。交配した種子には、母親からの遺伝子と父親からの遺伝子がちょうど半分ずつ組み合わされています。しかし、次の世代では両親の遺伝子が混ざり合って、千差万別の稲が生まれてきます。特に若い世代では、親と違った性質を持つ稲が生まれやすいのです。世代が進み、自分自身の花粉がかかり続けることによって次第に親(交配時の親ではなく、直近の親のことです)とほぼ同じ性質の稲が生まれるようになり、このことを「固定」といいます。固定までには、5~6世代かかります。富山県のように雪の降る地域では、稲を育てられるのは通常年に一度だけ。これでは、交配後の固定までに5~6年かかってしまいます。そこで、固定までの時間を短縮するために1年に3回、稲を育てます。この方法を「世代促進法」といいます。雪の降る季節は20℃以上に加温し、電灯を点けて光を補います。また、夏には日が長すぎて出穂が遅れるので厚いカーテンで覆い、8時間日長(短日)にコントロールして出穂を早めます。


<カーテン遮光による短日処理>

<照明による長日処理>