富山湾の海洋深層水-主な研究内容と成果

冷水性・深海性生物栽培漁業に関する技術開発

<サクラマス>
親魚養成の技術開発研究

【研究内容】
深層水及び淡水を利用して降海幼魚から親魚まで池中飼育し、100万粒の良質な発眼卵が確保できる技術開発

サクラマス(親魚)

スモルト(幼魚)


冷水性・深海性生物栽培漁業に関する技術開発2

<トヤマエビ・マダラ・ハタハタ>
栽培漁業化のための技術開発研究

【研究内容】
人口種苗及び天然の雄エビ(2~3才)から成熟雌親エビまでの養成技術開発と種苗量産及び中間育成の技術開発

トヤマエビのゾエア幼生

トヤマエビ(親)


冷水性・深海性有用生物の生態学的研究

<ベニズワイ>
カニの資源管理のための生態解明研究

【研究内容】
親ガニの交尾・産卵行動、脱皮による成長量及び幼生から稚ガニまでの成長速度を明らかにする

ベニズワイ(ゾエア幼生)

ベニズワイ(親)

<深海性バイ類>
産卵生態の解明と種苗生産の技術開発研究

【研究内容】
エゾボラモドキ、カガバイ、ツバイの親貝の飼育による産卵生態、及び稚貝期の適正餌料、成長速度を明らかにする。

バイ類(エゾボラモドキ)の卵塊


深層水多段利用研究

【研究内容】
○藻類、魚介類の飼育排水を使用した多段飼育の研究
○加温深層水を使用した藻類培養・アワビ養殖・魚類養殖の多段利用システムの開発


環境影響評価技術等研究

【研究内容】
○深層水の性状研究
○排水周辺環境のモニタリング
○藻場藻類培養研究


その他

【研究内容】
○活魚利用研究
○耳石へのバーコード標識


深層水有効利用研究の成果

Ⅰ 冷水性・深海性生物の栽培漁業に関する技術開発

■サクラマスの親魚養成技術の開発(H7~16)
○平成13年及び14年に養成された雌親魚それぞれ530尾、568尾から、目標である100万粒に近い、それぞれ92万粒、94万粒の採卵を行った。魚病(BKD)を感染を防ぐため、親魚養成用幼魚を神通川産に変え、飼育池への立入制限、消毒の徹底などの防疫体制をとった。親魚の生残率が高まり(95%)、卵の発眼率とふ化率も高くなった(90%)。
○平成8年産及び平成9年産のそれぞれ9万8千尾、8万1千尾を庄川に放流し、11年度及び12年度にそれぞれ18尾、5 尾の再捕があった。

■トヤマエビの種苗量産技術と放流技術の開発(H7~16)
○富山県栽培漁業基本計画にある15mm、35万尾を上回る20mm、45万尾(H12)の種苗生産技術が確立した。
○日本栽培漁業協会と共同で、平成12年に102万尾の種苗放流を実施し、放流効果を明らかにするための眼球破壊標識による追跡調査を実施中である。平成15年2月末での再捕率は0.05%である。
○より効果の高い放流サイズを明らかにするため、放流種苗の大型化を図る中間育成技術を開発中である。また、平成11年1 月に放流した体長53mmのトヤマエビの再捕率は2.66%(平成15年2月末)である。
○放流による減耗を防ぐための放流器の開発試験を実施している。
○人工種苗からの親エビ養成技術並びに一度採苗に用いた親エビの再採苗試験を実施している。

■マダラの親魚養成、種苗生産技術の開発(H7~16)
○人工種苗及び天然魚を養成し、自然産卵させることが可能となった。
○産出された卵から、平成13年に31mm、1万尾の種苗生産を行った。

■ハタハタの親魚養成技術の開発 (H9~14)
○人工種苗を養成し、自然産卵させることが可能となった。

Ⅱ 冷水性・深海性有用生物の生態学的研究

■ベニズワイの生態学的研究(H7~16)
○雌ガニの抱卵期間は約1年で、幼生のふ出時期は主に2~3月であることを解明した。
○養殖研究所との共同研究で、ふ出幼生を第1稚ガニにまで飼育した。
○甲幅2~4cmの未成体の脱皮間隔が1~2回/年であることが、飼育実験から明らかとなった。

■ばい類の生態学的研究(H7~16)
○飼育実験により、チヂミエゾボラ、カガバイ、ツバイの成長、成熟、産卵、ふ出に関する知見を得た。

Ⅲ 深層水多段利用研究

■藻類、魚介類の飼育排水を使用した多段階飼育の研究(H10~11)
○浮遊珪藻、大型藻類(マコンブ・チガイソ)の培養技術に関する基礎的知見を得た。
○アワビ、サザエ、トヤマエビ、マダラの飼育排水を利用して、多段階で飼育する技術を検討し、深層水の多段利用に関する課題を明らかにした。

■加温深層水を使用した藻類培養・アワビ養殖・魚類養殖の多段利用システムの開発(H12~16)
○飼育排水等の水質の測定、連続培養装置での付着珪藻の培養、せん断によるマコンブの再生培養、マコンブを餌としたアワビ・サザエの飼育、ヒラメの高密度飼育を行い、多段化に向けた要素実験結果を得た。
○マコンブの再生長能を利用し、それを餌とするアワビの養殖システムを考案し、その実証試験を実施中である。
○ヒラメの飼育排水でのアワビの飼育、アワビの飼育排水でのヒラメの飼育等多段化に向けた実験を実施中である。

Ⅳ 環境影響評価技術等研究

■深層水の性状研究(H7~14)
○取水深層水の水温・塩分・DO・COD・栄養塩・プランクトン・細菌・微量金属を測定し、一部の項目は継続して測定している。
○取水海域の水温・塩分・DO・COD・栄養塩の測定し、一部の項目は継続して測定している。

■排水周辺環境モニタリング(H7~8)
○排水路、坪川用水では、深層水の流入部で好塩性藻類が増加した。
○漁港内及び漁港周辺の生物環境は、他の地点と相違は認められなかった。漁港周辺海域の生物環境は継続して観察している。

■藻場海藻培養研究(H14~15)
○海藻培養実験装置を使用し、深層水の換水率や照度の違いによるツルアラメの生長を明らかにした。

Ⅴ その他

■活魚利用研究(H7,9,11)
○ヒラメ、チヂミエゾボラを収容した表層水と深層水のDO、CODの経時変化の差は小さく、両海水によるヒラメの蓄養における活力、品質等に顕著な差は認められなかった。
○深層水を使った有効な活魚(ヒラメ・トヤマエビ)輸送方法を開発した。

■耳石へのバ-コ-ド標識(H7~12)
○サクラマス、ヒラメ、クロダイの稚魚において、深層水による飼育水温低下によって生じる耳石の障害輪(バ-コ-ド)を放流魚の標識として使用できることを確認した。