無花粉スギ「はるよこい」について

今や国民病とまで呼ばれ大きな社会問題になっているスギ花粉症対策の一つとして,林業分野ではどのようにしたらスギ林からの花粉飛散量を少なくできるかが緊急の課題となっています。
 そんな中,富山県森林研究所(旧林業試験場)では,春先になっても全く花粉を飛散しない無花粉スギを開発し,「はるよこい」と命名して品種登録の出願をしました。
 この名前は,全国3,327件の応募の中から決定され,童謡にもあって親しみやすいうえ,花粉の飛ばないさわやかな春が来てほしいとの願いが込められています。
(※「はるよこい」は、平成19年3月22日に品種登録されました。)
1.特徴
 「はるよこい」は平成4年に富山市内の神社で偶然発見された無花粉スギ(タテヤマスギの突然変異体)の種から育成した品種で,「花粉がない」「初期成長がよい」「さし木の発根能力が高い」といった特徴を持っています(写真-1)。
 このスギは,外見上普通のスギと同じでなんら変わったところはありません。花粉がつまっている雄花も普通のスギと同じように形成されていきます(写真-2)。
 しかしながら,雄花の中を顕微鏡で詳しく観察してみると,花粉の基となる細胞(花粉母細胞)は,作られるものの,途中から花粉粒が肥大していき,最後には全く花粉がなくなってしまいます(写真-3)。
 一方,このスギからとれた種子の発芽率も普通のスギと変わりなく,苗の生育も順調であることから,種子をつける雌花の機能は正常です。
 このように花粉が作られない性質は一般的に「雄性不稔(ゆうせいふねん)」と呼ばれ,スギの場合,一対の劣性遺伝子(aa)によって支配されていることが明らかになりました(無花粉スギのデータベース参照)。

2.今後の苗の供給
 現在,「はるよこい」のさし木用の穂を安定的に採れるよう,採穂園を整備しました。平成23年から,都市部の緑化用として年間500~1,000本程度の普及が始まっています。

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